《ブッケンライフvol,4》お洒落な店は、お洒落な場所に出さなければいけないのか?

 

 店舗物件探しについてよく相談を頂く。

 

 業種は様々だが、希望のエリアの多くはメジャーな天神・博多エリア。お洒落どころだと薬院。賑わいなら西新も。とかく福岡の街は狭いので、集客を狙うのであれば必然的に立地は限られる。

 

 2016年、オーナーから依頼されて募集を出した物件は、姪の浜にあった。床面積25坪ほどの店舗戸建。姪の浜の位置付けは、ファミリー系メインのベッドタウンといったところか。
 

 駅前付近は多少賑わいはあるし、区画整理の影響で築浅のマンションも多く、綺麗な街という印象だが、大手チェーン系の出店が多く、お洒落タウンとは少し言い難い。よって個人経営の出店は少しイメージしづらかったのかも知れない。

 

 故に、テナント募集は、苦戦した。

 

 駅からは徒歩5分と駅前の賑わいからは離れる。賃料は相場に合わせたが、要改修の古家というのもあり多少割高感もあったのだろうか。土地性は前述の通り。表面上の情報だけ見れば、出店を控えようとする気持ちも分かる。

 

 しかし、この物件は、非常にポテンシャルを秘めた立地にあった。
まず、裏手に幼稚園があったこと。送り迎え前後、時間を持て余したママさん達が行く場所がなく、100メートロほど離れた近所の公園に集まる姿が多く散見されていた。

 

 次に、目の前の通りが、駅と巨大ベッドタウンである愛宕浜の住宅街を結ぶ道路であったこと。朝・晩、多くのサラリーマンや学生が行き交う。

 

 更にその通りは区画整理でとても道幅が広く、視認性も抜群。隣地の形状上、建物の両側面も見えるほど。そして4〜500mのストリートの中で、両サイド含め現時点で飲食店が1店舗しかないのは、当初知って驚きだった。

 

 無論、これらのメリットは募集情報にも入れた。他業者にも当然公開した。が、果たして響いたのかどうか・・。そもそもエリアを絞る段階で省かれていた可能性も大だ。

 

 現在、ここにはカフェバーが入っている。名前をコピルストア。
募集期間約4ヶ月のうち、内覧したのは3組だけ。そのうちの1組が店主の奥野さんだった。
 福岡発の大手飲食店で腕を磨いた。奥さんは元バーテンダー。百人力であるが、やはり勇気の要る独立であったと思う。オープンから8ヶ月ほど経過した頃に話を伺ったが、順調にお客さんを増やしているそうだ。

 

 そして、やはり!というか、安心した!というか。幼稚園のママさん方、そして帰り道のサラリーマンが多く立ち寄ってくれている、とのこと。

 元タバコ屋兼住居だったとは到底思えない、古家を存分に活かしたレトロなインテリアが親しみを増している。子供も気軽に一緒に入れるような雰囲気作りも功を奏しているようだ。

 

 何も打ち出していないにも関わらず、12月に「洋風おせちを作って欲しい」とのオーダーをいくつも頂いたというエピソードは、何よりこの付近の方々に受け入れられている証拠だろう。

 

 福岡で飲食店を目論む方々にとって、天神・博多も当然狙うべきエリア。しかし、言わずもがな、激戦である。奥野さんは表面的なエリアのイメージに流されることなく、立地を見極め、この店を作った。
 

 表立った情報をリアルに深掘りしてみるのはもちろんのこと、「些細な情報に流されて選択肢を狭めていないだろうか?」と、立ち返ってみることも重要。

 

 思い切って選ぶ視点を変えてみる。店に限らず、住についても。そうすることで大きな何かを手にすることができるかも知れない、と気付かされた。
 
– コピルストア –
福岡市西区姪の浜4-3-3
11:30-15:00/18:00〜22:00
日曜日(不定休あり)
Tel:092-407-2232
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(osaki)

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